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「そのレシート経費じゃないかもよ?」失敗談から学ぶバーチャルオフィス経費の境界線|先輩フリーランスと副業主婦のゆるっと座談会

a couple of white chairs sitting next to a white table
  • 田中: Webデザインの副業を始めたばかりの主婦。最近、事業の信頼性アップのためにバーチャルオフィスを契約。真面目で少し心配性。初めての確定申告を前に、家計と事業費の区別など、具体的な悩みを抱えている。
  • 佐藤先輩: 田中の会社員時代の先輩。5年前に独立したフリーのWebライター。数々の失敗を乗り越えてきたため、実践的な知識が豊富。面倒見が良く、おっちょこちょいな一面も。

はじまりは、一箱のレシート

田中:
「佐藤先輩、今日はお時間いただいて本当にありがとうございます…。SNSとか見てると、キラキラしたフリーランスの方ばかりで、皆さんちゃんとできているように見えるんですけど、私はもうこのレシートの山を見るだけで頭がパンクしそうで…」

都内のカフェで、田中はテーブルの上に置かれたレシートの束が入った小箱を、不安そうな目で見つめました。

佐藤先輩:
「お、田中、お疲れ! いよいよだね、確定申告シーズン。その小箱…見覚えがあるなあ(笑)。僕も1年目の時、靴の空き箱にレシートをパンパンに詰めてたよ。『宝箱』ならぬ『パンドラの箱』って呼んでたな」

田中:
「まさにパンドラの箱です! 特にこの、バーチャルオフィスの経費がどこまでOKなのか全然分からなくて…。しかも、私は会社員の夫の扶養に入っている主婦で、副業なので、経費の考え方が専業の先輩とは違うんじゃないか、厳しく見られるんじゃないかって、すごく不安で」

佐藤先輩:
「なるほどね。その気持ち、すごくよく分かるよ。でも、まず大事なことから言うと、専業か副業かによって、経費にできるものの範囲に法律上の差はないんだ。田中みたいな副業でも、僕みたいな専業でも、『仕事に直接関係していて、収入を得るために使った費用』なら、ちゃんと経費として認められる。だから、そこは安心して」

「ただ、副業ならではの注意点も確かにある。例えば、会社からもらう給料とは別に、副業で得た所得(収入から経費を引いた儲け)が年間20万円を超えると、確定申告が必要になる。だから、その儲けを計算するためにも、経費の証拠になるレシートは絶対に無くしちゃいけないんだ」

「今日は僕の失敗談を交えながら、その辺の話をしようか。あくまで僕個人の経験談だから、最終的な判断は税理士さんとか専門家に確認してほしいんだけど、きっと何かヒントにはなると思うよ」

そう言って、佐藤先輩は優しく微笑みました。

大失敗から学んだ大原則:「それ、胸を張って説明できる?」

田中:
「先輩の失敗談、ぜひ聞きたいです! 私、今まさに『これは経費にできるかな?』って、そればっかり調べてるんですけど…」

佐藤先輩:
「うん、それが最初の落とし穴なんだ。僕も昔、『経費にできるものリスト』みたいな記事を読み漁ってた。でも、税務署の人が見るポイントって、そこじゃないんだよね」

田中:
「え、そうなんですか!?」

佐藤先輩:
「そう。彼らが見ているのはたった一つ。『その支払いが、あなたの事業の売上を上げるために、本当に必要だったんですか?』ってこと。これを、第三者に対して胸を張って、筋道を立てて説明できるかどうかが全てなんだよ」

「僕、1年目の時に、バーチャルオフィスの近くにあったお気に入りのカフェの代金を、全部『打ち合わせ費』で計上しようとしたことがあるんだ。そこで仕事してたから、あながち嘘じゃないって思ってて」

田中:
「あ…私もちょっと考えちゃいました、それ…」

佐藤先輩:
「だよね(笑)。でも、それって『客先との打ち合わせ等、業務目的が明確な場合に限る』んだ。一人で作業するためのカフェ代は、残念ながら経費にするのは難しい。税理士さんにも『佐藤さん、そのカフェで誰と打ち合わせしたんですか? その結果、どんな仕事に繋がったんですか?』って冷静に聞かれて、ぐうの音も出なかった。それ以来、僕の中の基準は『これ、なんで経費なんですか?って聞かれた時に、ちゃんと物語を話せるか?』になったんだ。支出の目的や内容がわかるようにレシートへメモを残しておくと、すごく安心だよ」

【実践編】バーチャルオフィスと自宅経費のリアルな仕分け

田中:
「なるほど…『物語を話せるか』ですか。すごく分かりやすいです! じゃあ、その基準で考えると、バーチャルオフィスの月額料金や、オプションで頼んでいる郵便物の転送料、クライアントさんと打ち合わせした時の貸会議室料は、全部『物語』がありますね!」

佐藤先輩:
「その通り! それらは事業運営に不可欠な費用だから、全額経費として計上できるよ。問題は、田中みたいに『バーチャルオフィスを拠点にしつつ、実際の作業は自宅』っていうケースだよね。自宅の費用はどうしてる?」

田中:
「それが一番の悩みです! 家賃も電気代も、家計とごっちゃ混ぜで…。そもそも自宅の家賃まで経費にできるなんて、考えてもみませんでした」

佐藤先輩:
「うん、そこで出てくるのが『家事按分(かじあんぶん)』っていう考え方。プライベートと仕事で共用してる費用を、合理的な基準で分けて、仕事で使った分だけを経費にするんだ。代表的なのは2つの方法かな」

  1. 面積で分ける方法: 例えば、家全体が80㎡で、仕事部屋が20㎡なら、事業で使っている割合は25%だよね。その場合、家賃が10万円なら2万5千円を経費にできる。
  2. 時間で分ける方法: 1日24時間のうち、8時間仕事をしているなら、事業割合は約33%。この割合で電気代やネット代を按分するんだ。

「大事なのは、『何となく半分くらい』じゃなくて、ちゃんと根拠を示すこと。『この部屋を仕事専用にしています』って言えるように、生活空間と明確に区別したり、仕事部屋の写真を撮っておくとか、作業時間を記録しておくとか、客観的な証拠を用意しておくと、税務署からの質問にも自信を持って答えられるよ」

主婦フリーランス特有の悩み、「ごちゃ混ぜレシート」はどうする?

田中:
「家事按分、すごくよく分かりました! でも、もっと日常的な悩みがあって…。スーパーで夕飯の食材と一緒に、仕事で使うボールペンを買っちゃった時とか、レシートが1枚になっちゃうんです。これって、どうすれば…?」

佐藤先輩:
「あー、主婦(主夫)フリーランスあるあるだね! 家族の買い物と事業のものが混ざりやすいっていう。一番いいのは、面倒でも会計を分けて、レシートを2枚にしてもらうこと。これが後々一番楽になる鉄則だよ」

「でも、後ろに人が並んでると頼みづらい時もあるよね。どうしても一緒になっちゃった場合は、家に帰ってすぐ、そのレシートの事業で使った品目にマーカーで印をつけて、金額を丸で囲っておくんだ。それだけで、ちゃんと事業分だけを経費として計上できる証拠になる。もちろん、一番確実で管理が楽なのは、副業用のクレジットカードを1枚作っちゃうことだけどね。そうすれば明細がそのまま経費の記録になるから、公私混同を根本的に防ぎやすいよ」

田中:
「なるほど! それなら私にもできそうです。あと、もう一つ聞いてもいいですか? 扶養のことなんですけど…、経費をちゃんと計上すると、何か関係ありますか?」

佐藤先輩:
「お、いいところに気がついたね。それ、すごく大事。フリーランスの所得は『収入-経費』で計算されるから、経費を漏れなく計上すれば、その分所得が低くなる。この経費を差し引いた後の所得が一定額を超えると、旦那さんの配偶者控除が減ったり、社会保険の扶養から外れたりすることがあるんだ。だから、年間の収入と経費をざっくり計算して、扶養の範囲内で働くか、それとももっと稼いで自分で社会保険に入るか、計画を立てておくと安心だよ」

【応用編】青色申告と白色申告で、経費の扱いって変わるの?

田中:
「わあ、考えることがたくさん…。とりあえず、私は一番簡単な『白色申告』でやろうと思ってるんですけど、先輩はどっちですか?」

佐藤先輩:
「僕は手間がかかるけど、節税メリットが大きい『青色申告』だよ。実は、この申告方法によって、経費にできる範囲やレシートの保存期間も変わってくるんだ」

田中:
「え、そうなんですか!?」

佐藤先輩:
「うん。例えば、いくつか大きな違いがあってね」

  • レシートの保存期間: 白色申告は5年間だけど、青色申告は原則7年間なんだ。より長く保管しなきゃいけないってことだね。
  • 高価な備品: 僕が去年、25万円のパソコンを買ったんだけど、青色申告だから『少額減価償却資産の特例』っていうのを使えて、その年に全額を経費にできたんだ。もし白色申告だったら、何年かに分けて少しずつ経費にする『減価償却』っていう面倒な計算が必要だった。
  • 家事按分: さっき話した家事按分も、青色申告の方が柔軟に認められやすい。白色だと、事業での利用が5割未満だと認められにくいケースもあるみたいだけど、青色ならたとえ2割とかでも、合理的に説明できれば堂々と経費にできるんだ。
  • 家族への給料: 田中が将来、旦那さんに仕事を手伝ってもらってお給料を払う場合、青色なら届け出をすればそのお給料を『青色事業専従者給与』として全額経費にできる。でも、白色だと経費にはできず、控除額が決まっている『事業専従者控除』しか使えないんだ。

「もちろん、青色申告は複式簿記っていうちょっと複雑な帳簿付けが必要だったり、事前に申請が必要だったりする。でも、最大65万円の所得控除があったり、メリットは本当に大きい。今は便利な会計ソフトがあるから、昔よりずっとハードルは低いよ。将来、事業が大きくなってきたら検討してみるといいかもね」

まとめ:経費管理は、未来の自分を助ける冒険の記録

🚨 佐藤先輩からの大事な注意点 🚨

「…と、今日話したことは、あくまで僕が5年間フリーランスをやってきて、失敗しながら身につけた個人的なやり方だからね! 僕は税理士じゃないから、これが100%正しい法律の解釈ってわけじゃない。だから、もし田中が『これは金額も大きいし、判断に迷うな…』って思うことがあったら、必ず税務署の窓口に電話で聞くか、税理士さんに相談するんだよ。それが一番確実で、安全な方法だから。約束ね!」

田中:
「はい! もちろんです。でも、先輩の経験談を聞けたおかげで、何から手をつけていいか、すごくクリアになりました。レシートをただの紙切れじゃなくて、『事業の記録』なんだって思えるようになりました」

佐藤先輩:
「そうそう、その感覚! 経費管理って、自分が事業家として歩んできた『足跡』を残す作業みたいなものなんだよ。このレシート一枚一枚が、『私はこれだけ考えて、行動して、事業を前に進めたんだ』っていう証拠になる。そう思うと、ちょっと楽しくなってこない?」

佐藤先輩の話を聞いて、田中は目の前の小箱を見つめ直しました。さっきまで「パンドラの箱」に見えていたレシートの山が、なんだか自分の頑張りを証明してくれる「冒険の記録」のように見えてきました。

もしあなたも、かつての田中さんのように、経費のことで悩んでいるなら、ぜひ佐藤先輩の失敗から生まれた知恵を参考にしてみてください。

【佐藤先輩流・ゆるっと経費管理3つの心得】

  1. 「これ、なんで必要?」と自分に問いかける。(第三者に物語を話せるか?)
  2. レシートは「即撮影+メモ」で溜めない。(ごちゃ混ぜレシートは印をつける)
  3. 本当に迷ったら、悩む前にプロ(税理士・税務署)に聞く!

経費管理は、あなたを縛るものではなく、あなたの事業を守り、未来のあなたを助けるための力強い味方です。正しい知識を身につけて、安心して事業に専念できる環境を整えていきましょう。


この記事は、フリーランスの経験談と公開情報に基づいて構成したものであり、税務上のアドバイスを目的としたものではありません。経費の具体的な判断については、必ず管轄の税務署または税理士にご相談ください。

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